[はじめに]


今から20年前、1990年前後、このあたりは、世界史にとって、時代の大きな転換点である。それまで世界を2つに分けていた冷戦が終結。労働賃金の安い東側諸国のマーケットが、西側諸国のマーケットに合流し、経済のグローバル化が本格的に始まった。また、冷戦時代に発展した軍事技術が、民間経済に解放され、インターネットが普及。IT革命をもたらした。これにより、経済のグローバル化が更に加速され、我々の生活も、大きく変わることとなった。
この世界史の変動に、日本の経済、社会、そして、政治も、大きな影響を受けることとなった。
日本経済は、資産価格の急上昇と暴落を経験。このバブル経済の崩壊により、企業のバランスシートは大きく痛んだ。また、グローバル競争の激化により、企業に求められる人材も、大きく変わり、日本企業の特徴であった、年功序列賃金、終身雇用制度も見直しを迫られることとなった。
これら経済環境の変化は、日本人の生活に大きな影響を与えることとなった。就職氷河期やリストラの時代が訪れ、名門の大学を出れば、一流の企業に勤められ、定年まで、そしてその後の年金生活も一生安泰という時代は終わることとなった。自殺者の急増や、離婚、フリーター、ニートの増加など、不安定な社会を生み出すこととなった。
そういった混乱の中、本来、力を発揮しなければならないのは、政治である。混迷の中で、日本人の生きる道しるべを示し、また、新しい時代に企業が対応できるよう、手助けをしなくてはならない。
この世界史の地殻変動の中で、90年代はじめ、日本の統治機構の象徴であった自民党の一党支配は終わった。選挙制度改革、省庁再編、民営化、規制改革などにも手が付けられた。政権交代がいつでも可能な2大政党制も定着をしてきた。しかし、これらの改革では、世界史の中での日本の地盤沈下を止めることはできず、混迷が続いているのが現状である。
加えて、ここ数年の各政権の混乱で、政界の人材の劣化ははっきりと露呈されはじめており、長期的な視野で、政界の再生に取り組まなければ、日本は舵のない航海を今後も強いられることとなるであろう。
政治家は、この20年の混迷の原因をしっかりと認識し、国民に日本の進むべき指針を示さなければならないと、私は考える。

[5つの主張]

1、経済成長戦略で雇用をつくる

我が国は少子高齢化が続き、人口減少社会に突入している。働いている人達が働いていない人達を支える、助け合いの社会を維持するには、今まで以上に、一人一人が価値を生み出せるようにする経済成長戦略の実行は欠かせない。
まず、短期的な施策として、慢性的なデフレギャップを解消するため、日銀と協調し、思い切った金融緩和を行う必要がある。
次に、産業構造の転換を促進させる必要がある。世界の経済構造は、石炭経済から石油経済へ、そして、今、太陽など自然エネルギーを利用した「太陽経済」に移行しはじめている。製造業などがこの大きな変化に対応できるよう、施策を打っていく必要がある。
また、我が国は、サービス産業の生産性において、他の先進国に劣っている。これは、医療、介護、子育てなどの分野を、長年、過度な規制で縛っていたことに起因する。少子高齢社会では、これらサービス産業のニーズはますます高まる。経済的規制の思い切った見直しと、それに伴う問題は新たな社会的規制を考えることで、サービス産業の活性化を図っていく必要がある。
低成長にあえぐ先進国に比べ、アジアやアフリカ諸国は、堅調な経済成長を続けている。特に近隣のアジア諸国は、交通手段の発達などにより、行き来がしやすくなっており、文化的な融合もわずかながらみられはじめている。近隣のアジア諸国への日本企業の進出、日本文化の輸出を手助けすると同時に、外国人観光客や外国からの投資を呼び込み、力強い外需を、内需に取り込んでいく必要がある。そのための特区を開設することも検討すべき課題である。
労働人口が減少していくなかでは、労働市場の改革は不可欠である。働きたい人が働ける環境、そして、働いている人がより、能力を発揮できる環境をつくる後押しをする必要がある。

2、行政や政治をスリムに

現在のような、予算の大きさが税収の倍以上という、異様な財政状況は、早急に脱するべきである。しかし、安易な増税に頼るべきでない。縦割りの弊害を排して各省一体となって、経済成長戦略を進め、民間の担税力を高める一方、徹底的に、政府部門の無駄を排除するべきである。一般会計だけでなく、特別会計などの複雑な仕組みは、分かりやすく整理する必要がある。また、政府部門の赤字が続く限りは、公務員や議員の総人件費を大幅にカットするべきだ。
大胆な改革を実行するためには、国家戦略局、内閣人事局、内閣予算局を設置し、政策・ヒト・カネを官邸で掌握できるようにする必要がある。
公務員の人事制度は、年功序列賃金を改め、仕事の内容によって給料を決める民間並の制度に改めるべきだ。また、公務員と民間で別々になってしまっている労働市場を融合させ、人材がより行き来できるようにするべきだ。

3、地域のことはその地域で

徹底的な行政改革と合わせ、行政が、NPOなど民間の組織や地域社会と連携し、国民全員が、行政サービスの供給側にも立てるような社会を目指すべきだ。
個人でできないことは、地域で。地域でできないことは、その地域の自治体に。地域の自治体でできないことは、道州に、道州でできないことだけを国に。という理念で、地域への住民参加を促し、また、地域主権型道州制の導入を目指す。一人ひとりが、自分達の住んでいる地域社会に関わることで、公共心は育まれる。

4、世界の中の日本

地球環境問題、新型感染症、サイバーテロ、エネルギー問題、食糧問題など、国内だけでは解決できない問題がますます多くなっている。国際的な問題の解決をする機関として国連の役割は大きなものとなる。問題解決型の組織にするために、我が国も、国連改革を、積極的に働き掛ける必要がある。
発展途上国の経済成長は、先進国の相対的な国力の低下をもたらす。したがって、日本外交は、歴史的な信頼関係を築いている日米同盟を、今後も外交の基軸とし、国際社会の中で助け合うべきである。また、日米同盟では対応できない分野については、自らの意志と頭で対応できる体制を築くべきだ。
日本人の世界への関心なくして、また世界の人々の日本への関心なくして、日本の将来はない。若い世代の外国人留学生の受け入れを促進する。また、若者の海外への留学の促進をはかるべきだ。

5、一人一人が新しい時代の中で輝ける教育を

かつて試みられた子供手当などは、真に未来を担う世代への助け合いの仕組みではない。一律にまんべんなく少額の手当を配っても、修学旅行に行けないような子供達を救うことにはならない。一律の給付はやめ、本当に困っている家庭の子供たちを救うことに、財源を充てるべきである。多様性を持った時代の中で、教育の機会の均等は、今後、更に重要性を増してくる。
時代の急激な変化に直面している現在の子供達は、親や祖父母や、教師の生き方をそのまま真似ることはできない。自分自身で生き方を考えることが求められる。何のために生きるのか、何のために働くのかからはじまり、日常生活の細かなことまで、自分で考えることができるようになる、「考える教育」を、行わなければならない。
また、今後、社会に出る上で、ITへの対応能力に加え、英語力は必須のものとなる。国際社会の中でのアイデンティティを持つため、国語教育や倫理教育に力を入れると共に、英語力の強化にも思い切った施策を打つ必要がある。
加えて、社会人教育も強化していく必要がある。職業訓練に加え、大学、大学院の社会人への門戸を広げることで、人々が、変化の激しい社会に対応できるよう、バックアップをしていくべきだ。

[まとめ]

年々働き手が増えていく、人口増加社会では、国の富は、簡単に増えていた。今後ますます働き手が減っていく人口減少社会では、工夫をしなくては、国の富は減っていく。国の富の減少は、年金や医療保険など支えあいの仕組みの維持を困難にし、社会にひずみをもたらしていくこととなる。
5つの主張のはじめにあげた、経済成長戦略は、日本社会を維持する上で、欠かせないものである。一人一人が働くことは、自分の幸せのためだけでなく、国全体に、社会全体に、貢献することとなる。
この経済成長戦略を実行するためには、政府部門のリストラや地域主権の確立は欠かせない。民間や地方が、国に受身で仕事をもらっている状況が続けば、日本経済の再浮上はおこりえない。
また、この世界史の変動の中で、世界を見ずして、日本の将来を決めることはできない。徹底的に、外に目を向けることが求められる。
時代の変化の中で、一番求められるのは、一人一人の意識の変化、生き方の変化である。我々は、それぞれが、生き方を考え、実践していかなければならない。
この時代の混迷の中で、大胆に新しい方向に社会を引っ張っていくには、政治家、特に、総理のリーダーシップは、欠かせない。その政治家、政権与党を選ぶのは、国民一人一人である。我々国民一人一人が、社会で働き、貢献し、そして、国全体を考えることで、政治に働き掛けていく。政治家は、その環境をサポートしていく。そういった社会を築いていくことが、今、求められるのではないか。
これらの政策を実行することで、日本の歴史が少しでもいい方向に進むことができるよう、私は、全てをかけて戦ってまいりたいと考えている。

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