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「鉄」の世界史

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昨年秋、初めてニュージーランドを訪れた。ニュージーランドの歴史を見るうちに、びっくりしたことがあった。西洋人が訪れるまで、鉄器がなかったのだ。武器の差は歴然としており、結果、ごく少数の西洋人にニュージーランドは支配されることとなった。15年前に南米の遺跡をまわった際のことも思い出した。南米の歴史もそうだった。鉄はそれほどのインパクトで世界史を動かした。

それを考えると、紀元前1400年頃にヒッタイト(今のトルコあたり)が世界で最初に鉄器文化を築いたことは、世界史の大きな分岐点だ。ユーラシア大陸以外の大陸、アメリカにしても、オセアニアにしても、その3000年近く後の大航海時代まで、製鉄技術は渡らなかった。石器と違い、鉄器は、世界同時多発的には生まれなかった。鉄器を作る技術の無い地域は、征服されることとなった。我が国は、かろうじて古代からユーラシア大陸との交易もあり、細々とだが、鉄器の文化も取り入れられてきたことは幸いだった。

鉄の技術が確立し、強力な軍事力が生まれたことで、広大な土地を支配することが可能となり、国家ができあがった。物も人も遠くに運ぶことが可能になり、今に至る経済は、鉄と共に発展したと言っても過言ではないだろう。

ヒッタイトの鉄器文化の確立からはるか後にできた宗教はたくさんある。今メジャーな宗教の多くがそうだ。私は、鉄器ができる以前の宗教と、その後の宗教では、政治や経済のシステムが大きく違うからには、生きることに対する考え方も大きく違うのではと考えている。『プロティタンティズムの倫理と資本主義の精神』にあるように、一人一人の生き方に大きな影響を与える宗教は、世界の経済の発展、金融の発展を加速させ、産業革命を後押ししてきた。

鉄の文化の確立から3400年。今、世界に経済的なフロンティアが無くなりつつある。遠くないうちに、世にあふれるお金に対して投資をする先が極端に少なくなり、人為的にわざと波を作らなければ儲からない時代がやってくるだろう。今の経済のやり方が行き止まりに行きつく前に、経済のあり方はそろそろ見直さなければならない。それと共に、その経済システムの影響を受けてきた、我々自身の生き方をも見直すべき時がくる。お金と物への価値だけでなく、3000年以上前、鉄器ができる前に重視していたこと、精神的な充実や、物以外への感謝。こういうものも取り戻すことで、我々の生活は新たな段階を踏むのではないか。

世界に物が普及した時、鉄の経済は、成功したことになる。そして今、コンピューターが人間の代わりに働き、物もサービスも生みだす人工知能の時代が始まっている。10年後、20年後には、我々が当たり前だと思っている多くの仕事はもうないだろう。私の幼い頃にはいた駅の改札口で切符を切るおじさんのように。

我々の生活は大きく変わる。生き方も変わる。働き方も変わる。物と個人の金融資産を増やすための経済から、少しずつ、世の中全体のために人間一人一人が働く世の中へ。少しずつ社会は変わっていくと思う。そのための経済、例えば「公益資本主義」という考え方もしかり。新しい経済のあり方、そのための政策を自分なりにまとめていきたい。

201709オークランド
写真は2017年9月上旬のニュージーランドの商都オークランド。
南半球にあるこの街の9月は、日本でいう桜の咲く頃の季節か。
少し肌寒かった。

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