[はじめに]

今から30年ほど前、1990年前後は、世界史における大きな転換点であった。それまで世界を2つに分けていた冷戦が終結。労働賃金の安い東側諸国が、西側諸国のマーケットに合流し、経済のグローバル化が本格的に始まった。また、冷戦時代に発達した軍事技術が民間経済に開放され、インターネットが普及。IT革命をもたらせた。これによりグローバル化はあらゆる分野で更に加速され、我々の生活も大きく変わることとなった。

この世界史の変動に、我が国の経済、社会、そして政治も、大きな影響を受けることとなった。日本経済は、資産価格の急上昇と暴落を経験。このバブル経済の崩壊により、企業のバランスシートは大きく傷んだ。また、グローバル競争の激化により、企業に求められる人材も大きく変わり、日本企業の特徴であった年功序列賃金、終身雇用も見直しを迫られることとなった。就職氷河期やリストラの時代が訪れ、名門大学を出れば一流企業に勤められ、定年まで、そしてその後の年金生活も一生安泰という時代は終わることとなる。自殺者の急増、離婚、フリーター、ニートの増加など、社会を不安定化させることとなった。

あれから30年。グローバル化は、世界に恩恵をもたらせたが、一方で大きな負の問題も生んだ。世界が同じ土俵で競争をすることで、賃金の安い途上国に先進国は雇用を奪われ、世界的に中間所得層は没落した。イギリスの国民投票によるEU離脱の決定、アメリカの排外的な政権の誕生など、グローバル化への反動に加え、各国で立憲主義をも否定する勢力が台頭し、2度の世界大戦の失敗をもとに積み上げられてきた国際協調、民主主義、自由主義の理念は危機を迎えている。

我が国においても、グローバル化による世界的チェーンの展開、企業の大規模化などにより、多くの中小零細企業が淘汰されることとなった。また雇用の変化は、次の世代にも影響を与え、親の年収が子供の将来をも左右してしまう格差の固定が生じはじめている。更に、人口減少時代に本格的に入ったことにより、地方の衰退は、目に見えて明らかになってきている。

こういった歴史の地殻変動の中で、本来、力を発揮しなければならないのは、政治である。混迷の中で、日本人の生きる道を示し、また、新しい状況に対応した政策を打っていかなくてはならない。

90年代はじめ、日本の統治構造の象徴であった自民党一党支配は終わった。選挙制度改革、省庁再編、民営化、規制改革などにも手が付けられた。政権交代がいつでも可能な2大政党制も定着したかにみえた。しかし、これまでの改革では、時代の変化に対応できていない。冷戦構造や高度成長期の思考から抜け出せていない今の政権の路線を進み続ければ、我が国の未来への扉は開けることはできない。

政治の劣化、政治家の劣化が言われて久しいが、政治家は、この30年の歴史の変化をしっかりと認識し、国民に、我が国の進むべき道を示さなければならない。

[新しい時代を創る5つの柱]

1、地域の再生で働く場を創る

東京の大学を卒業し、誰もが知る大企業や官庁に就職し、年を経るごとにお給料が上がり、都心にマンションか少し郊外に一戸建ての住宅を買い、子供二人を育て、定年退職後は十分な年金をもらう。こういった生活を多くの日本人は目指してきた。
しかし、少子高齢化が進み、人口減少社会に入った今、年金はじめ社会保障制度を維持することは大変難しい。更に、経済のグローバル化の中で巨大化する大企業の実質的な税負担率は低く、労働分配率も低いのが現状だ。激しい国際競争の中で、大企業の収益は働く人にも国にもいかず、企業にため込まれるか、株主に吸いあげられてしまう。
このまま大企業ばかりに経済を頼っていては、持続可能な社会保障、持続可能な経済循環を維持することはできない。
社会保障を維持するために、年金の受給年齢を上げる、定年の年齢を上げる。これをこれからも続けていったら、いったい我々は何歳まで満員電車に押し込まれて通勤することになるだろうか。
大企業の国際競争力強化を中心に添えた政策だけでなく、これからは多種多様な経済プレイアーを育てていく必要がある。
まず、働き方や家族のありさまが多様化している中で、現在の複雑な社会保障制度を整理し、ベーシックインカムのような最低限の生活の保障をする仕組みを検討することが重要だ。
また、シニアでも子育て中の女性でもいきいきと働けるようにするためには、通勤時間の短い職場が増えること。地元の経済、地域経済の再生がカギだ。大企業のチェーン店が商店街を一掃してしまった現状は見直すべきであり、地元で働くフリーランスや、個人事業主に優しい税制も整備する必要がある。
また、全国各地で空き家もたくさん出始めている。都心のウォーターフトントの高層マンションばかりに目を向けるのではなく、土地の使い方も、人口減少社会、高齢社会に合わせて、集中型ではなく分散型に見直していくべきだ。
また都市農業も見直していくべきだ。誰でも気軽に小さい規模からでも農業を始められるようになれば、健康維持に役立つだけでなく、都市住民の食費の低下にもつながる。土地の適正な利用は、所得が増えない時代でも、生活費の低減と豊かな生活を実現することができる。
大企業ばかりでなく、地域に目を向け、地元でお金を回していく。物を大量に買う時代から、気に入った物を選び大切に使う時代に変えていく。地域と個人に目を向け、お金の額や物の量だけでなく、生活の質に目を向けていく。利益率を上げ、賃金を上げ、税収も上げ、人手不足も解消し、生活費も低減させ、長時間労働も通勤時間も減り、健康的な生活をも同時に実現する経済政策に転換をしていくべきだ。

2、自然エネルギー立国の実現

福島の原発事故以降、世界の原発への目は厳しくなり、特に先進国では原子力発電のコストは一気に上昇した。原発から撤退する国や企業は相次いでいる。原発が一番安いと言っているのは我が国だけであり、政策の転換は必須である。

原子力をはじめとする大規模集中型電源は20世紀の電力システムであり、21世紀は、自然エネルギーとITを駆使し、災害にも強いネットワーク型、小規模分散型の電力網を実現していかなければならない。
エネルギー自給率の低い我が国は、石油を買うために、工業製品の輸出に励まなければならなかった。自然エネルギーの活用でエネルギー自給率を上げることは、化石燃料の輸入も減らすことになる。
また自然エネルギーは不安定だという声もあるが、細長い日本列島の全てで気象条件が同じだということはない。送電網を整備し、各地で電力の融通をできるようにし、太陽光、風力など日本各地の四季折々の気象条件を巧みに利用することが重要だ。今まで利用価値の無かった田舎の林業から発生する端切れを燃やし木質バイオマス発電を行い、その地域の電気をまかなう。都市の各種工場が出している熱も利用していく。日本の得意な省エネ技術も更に開発を進め、住宅も熱効率のいいものに変え、電力を極力使わない生活に変えていく。これらは巨大な新しい仕事を生み出し、経済にも大きく寄与していくことになる。
世界の多くの国で一番安い電源は自然エネルギーである。その潮流をしっかり見据えエネルギー政策を転換する。今こそ政治の決断が求められる場面だ。

3、税金の使い方の見直しを徹底

いまだ、政治家の口利きや、高級官僚の天下りの問題が報じられている。我が国は政治家、高級官僚、業界団体の癒着により、税金の使い方がゆがめられてきた。一部のコネのある人に振り向けられてきた税金の使い道を正し、本当に必要な人達を助けるために税金は使わなければならない。世の中のために働く公僕であるべき公務員や政治家の本来のあり方を、今再び追求しなければならない。

政治家が受け取っている企業や団体からの献金は癒着のもとであり、全面的に禁止するべきだ。
また、公務員の中立性はより厳格に図り、天下りも全面的に禁止にするべきだ。天下りのために、余計な仕事や団体が作られてきた。同期一人が偉くなると他の多くの同期は昇進できないような、今のピラミッド型の人事制度は見直すべきだろう。より適材適所に人材が配置されることで、より効率的で的確に仕事をする政府を実現することができる。
一般会計や特別会計が複雑に絡み合う、今の公会計制度も、簡素なものに変える必要がある。
全国一律で縛っている今の中央集権体制をより分権的にし、地方の行政機関や地方の政治に裁量と責任を与える。それは地元の住民の責任も増すことにもなり、我が国の民主主義の発展にとっても重要だ。納税者の意見がより反映される財政運営がなされなくてはならない。

4、世界をより良くする国を目指す

モノも人も情報も簡単に国境を越える時代に、世界を意識せずに暮らすことは難しい。
70年以上前、2度の大戦を機に、国際連合はじめ、国際的な調整機関が発足した。しかし、世界の紛争はいまだ無くならず、核兵器は拡散し続け、通常兵器の開発はどんどん進んだ。経済分野においても、世界的な金融の波により大きく儲ける人が増える一方、飢え死にする多くの子供達は救うことはできていない。また国境を越えた病気の蔓延や地球環境問題、テロなどグローバルな問題にも対応できていないのが現状だ。

世界は努力を重ねてきたものの、理想的な状況はいまだ見えていない。その中で各国は世界をより良くする努力をしていかなくてはならない。
我が国が70年前に掲げた非戦主義、平和主義は、今、わざわざ旗を降ろす必要はない。戦力に寄らない国際体制を築くことは、これから更に希求されるべき問題だ。
また、我が国の民生分野での高い技術力を軍事技術の開発に振り向けていく必要もない。我が国の人材も資金も、世界の人々の生活の向上のために使われるべきだ。それこそ、我が国のブランドの構築、我が国の世界の中での存在意義になるのだ。
我々は、世界の覇権国を目指すのではなく、国際社会の発展に必要不可欠な国を目指すべきだ。
そして、世界的な問題解決のため、国際連合の改革は不可欠であり、我が国は積極的にそのあり方を提唱するべきだ。
また、我が国の外交防衛の独立性を脅かしかねない集団的自衛権への傾斜は慎むべきだ。我が国が攻撃されていなくても地球の裏側まで軍事行動を行うことのできる集団的自衛権ではなく、我が国の領土領海が脅かされた場合の問題、個別的自衛権のあり方を深く考え、他国との軍事協力のあり方も個別的自衛権をもとに考えていくべきである。

5、生き方をはぐくむ教育を

誰もが同じことをすれば豊かになれる時代は終わってしまった。これから我々は、自分の特性を生かし、各自が何で食べていくか、どう生きていくかを考えなければならない。教育は、そのためにあるべきだ。全国民にあらゆる分野で平均的な能力を持たせる教育から、自主性、自発性、判断力を持たせる教育に変えていかなければならない。
インターネットの時代である。バーチャルな時代だからこそ、対人関係のあり方など生き方を学んでいく必要がある。また、ネット上で世界のあらゆるものが見られ、あらゆる人とつながれる時代だからこそ、若者の海外への留学を促進し、また外国人留学生の受け入れも積極的に行うことが重要だ。他の文化に触れてこそ、我が国固有の文化を理解し、身に着けることができる。
一億総中流時代が終わりを告げ、格差の固定化が深刻になりつつある。6人に1人の子供が満足に食事もできていないという報告もある。教育機会の均等は、今後の我が国の発展に欠かせない。こういう時代だからこそ、教育はなるべく無償に近付けなければならない。

[終わりに]

世界史の時計は常に止まらず、刻々と、確実に進んでいく。グローバル化は、今後ますます深化するだろう。

グローバル化の時代では、国の総生産(GDP)を上げても、必ずしも国民の所得は上がらなくなり、劇的な税収増も見込めなくなってしまった。量や規模を大きくすることに固執する経済政策は、転換しなくてはならない。そのためには、世界から富を稼ぐことばかりに目を向けていた経済政策から、足元のお金を地域で循環させていくことも考える経済政策に変えていかなければならない。
地域に目を向けることの重要性は経済の根幹、エネルギー政策にも当てはまる。我々は目の前の資源にあまりにも気付かなすぎた。しかし、技術の進歩により、より簡単にエネルギーを手に入れることができるようになったのだ。自然エネルギーへの思い切った転換が必要だ。
地域の人、お金、資源を活用していくためには、行政も、地域の実情に合わせてより細かく対応していかなくてはならない。中央集権型の官僚制度は見直し、地域主権型の国のあり方を模索しなければならない。
今後、世界が経済発展をすることで、食料も水も資源もより足りなくなるだろう。その時、日本人の周りの人を思う精神、工夫をする生活様式は世界で重要になる。我々の特性をいかしていくことは、世界の中での我が国の存在意義にもつながる。
我々は、今、生き方を見直さなくてはならない。周りの人を思う心の再生、本来の生き方の実践ができて初めて国の将来は開けるのだ。

グローバル化、IT化により、世界は大きく変わった。その中で我が国は、今まで敷いてきた線路の上を、何も考えずに走り続けてはいけない。冷戦構造、高度成長期の思考から脱し、政策を転換しなくてはならない。
自ら変われなかった種は残念ながら滅びることを歴史は証明している。この方向転換は、政治の高い判断力と決断力がなければ、正しく行うことはできない。今こそ、政治の役割は重要だ。そのために私は身を賭して働いてまいりたい。

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